新境地！柴山紗帆が初の「ハートの女王」役で登場する、新国立劇場バレエ団『不思議の国のアリス』(後編)

2023年、新国立劇場バレエ団のプリンシパルに就任し、ますます輝きを見せる柴山紗帆さん。６月に上演する『不思議の国のアリス』では、強烈で個性的な「ハートの女王」役（アリスの母と２役）に挑戦する。

ルイス・キャロルの童話を題材にした『不思議の国のアリス』は、クリストファー･ウィールドン振付による世界を熱狂させた、世界有数のバレエカンパニーがレパートリー化しているバレエの傑作。アジアでは唯一新国立劇場バレエ団だけが上演を許可されている。

前編は新境地となる役への抱負ほか、後編は転機となった作品、新国立劇場バレエ団初となる7月ロンドン公演への期待、オフの日常など、柴山さんにお話を伺った。

転機となった役

これまでの舞台で、印象深い作品はありますか？

最近では、毎回の公演をそのように感じています。そのなかでも、『白鳥の湖』は節目で踊らせていただいているので、毎回新しい発見があります。

発見は、技術的なもの、あるいは感情や演技に関連するものでしょうか。

多分、その全部が繋がっていく感覚を覚えました。踊らせていただく回数自体も多い役なので、おそらく変化が自分自身で見えやすいのだと思います。

最近の作品では、難易度の高い「バレエ・コフレ」の『エチュード』がありました。シーズンプログラムで、踊る力が向上したことを感じますか？

まず、シーズン最初に『眠れる森の美女』のオーロラ姫を踊った際には、一緒に踊ったプリンシパルの福岡雄大さんに、本当に細かく色々なことを伝えていただき、バレエの基礎を見直す機会になりました。そして『エチュード』では足の出し方一つをとっても、ゲストティーチャーから多くのことを学ぶことができました。次の公演の『ジゼル』では、基礎的な力が少しながら上がったように自分でも実感でき、改めて基本を見直すことは大事だと感じています。

そのようにして今シーズンのプログラムを通して、基礎レッスンへの取り組み方が自分の中でも変わりました。あとは、公演と公演の間に、自分でも多くのエクササイズを意識的に取り入れて行うようにしています。

柴山さん自身が、目指す踊りは？

ご覧になった皆様の心に残る体験として、舞台をお届けしたいということは、ずっと思っています。そのようなコメントや感想を目にすると、心から良かったと思えます。

今後も、演技はこれまで以上に大事にしていきたいと感じています。振り返ってみると、周りがあまり見えずに技術にこだわっていた時期に、演技の部分で最初に解き放っていただいたのが、吉田都監督でした。それまでは、ここでは必ずこう踊らなければならないという、技術に固執した方向に気持ちが行きがちだったように思います。

それは、どの作品で起こりましたか？

『ライモンダ』の作品で、３幕のヴァリエーションを踊った時のことです。物凄い静けさの中で、音だけが響くような、特別な緊張感のある場面です（2020/2021シーズンで柴山さんがソリストの時に主役を踊った、作品中で有名なハンガリー風ソロの踊り）。

吉田都監督が私に「はったりでもいいから、この劇場で私が一番だと思って踊りなさい」と声をかけていただいたことが私の中に残っています。その精神で踊った時に、役に入り込むことを初めてしっかりと実感できました。

新国立劇場バレエ団初の海外公演に、ジゼル役で主演！

7月『ジゼル』（ロンドン公演）では、会場の英国ロイヤルオペラハウスの舞台に立たれます。期待を寄せていることはありますか？

まずは、あの舞台に立てることが夢のようです。私の性格上、あまり気負いせず、考え過ぎずないように自分の中で楽しもうと思っています。

オフの過ごし方

オフはどのような時間を過ごしていますか？

私はバレエに自分の時間を多く捧げ過ぎてしまいがちなのですが（笑）、最近ではいろいろなエクササイズをしています。あとは映画鑑賞、舞台鑑賞です。来日公演のミュージカルを観ることもあります。美味しいもの、ショッピングも好きですし、最近は出来ていないのですが遠出もします。割と外に出るタイプですね。最近は、こんな所にあるのを知らなかったというお店を見つけてお休みを過ごすのが楽しいです。

楽しそうですね！　舞台鑑賞は、演技の参考にされることも？

日本人にとっては難しくても、海外の方がミュージカルで自然にされている仕草は、参考にしたい部分がたくさんあります。ハグなどもそうですよね（笑）。

進化し続けるプリンシパル・柴山紗帆さんが挑戦する、貴重な機会の「ハートの女王」役。新国立劇場バレエ団上演による、人気の作品をお見逃しなく！

新境地！柴山紗帆が初の「ハートの女王」役で登場する、新国立劇場バレエ団『不思議の国のアリス』(前編)

photo by 山崎あゆみ（Ayumi Yamazaki）http://ayumiyamazaki.com/
東京を拠点に建築、旅、人物と幅広いジャンルを撮影。

text by 鈴木陽子（Yoko Suzuki）
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。

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