咲妃みゆインタビュー ミュージカル『レッドブック~私は私を語るひと~』主人公アンナが問いかける「違いを理解すること」から始まる物語
韓国で大ヒットしたオリジナルミュージカル『レッドブック〜私は私を語るひと〜』が、日本版として初上演される。本作は、女性が自由に語ることさえ許されなかった時代に、自分の言葉で世界と向き合い、刺激的な小説“RED BOOK(レッドブック)”で自分らしさを表現する主人公アンナを描いている。
そのアンナ役を務めるのは、元宝塚歌劇団トップ娘役であり、現在も舞台・ミュージカルで活躍を続ける咲妃みゆさん。本インタビューでは、アンナという人物への共感、俳優としての原点を振り返るエピソード、そして“違いを受け入れて尊重する”という物語のテーマについて話を伺った。
アンナに共感する、周りと違う感覚
アンナ役について、ご自身と共感する部分として「意志の強さ」を製作発表で挙げていらっしゃいました。ほかにも共通するところはありますか?
特に、20代くらいまでの自分と重なる部分が多くあると思います。突飛なことをしているつもりはないのに、変わり者と思われることが時々あって。その度に「どうしてなんだろう」と考えてしまって。当時は、心が痛むこともありました。
でも歳を重ねる内に、少しずつ考え方が変わりました。ありのままを受け入れよう、と思うようになって。不思議なことに、自分を受け入れることで大らかな気分になれたんです。周囲に対しても、「人はそれぞれ、違って当然!」と思えるようになりました。
アンナは、自分は自分、他者は他者という感覚をしっかり持っています。意見が違っても拒絶するのではなく、受け止めたうえで自分の考えを伝えます。そこが、本当に素敵だと思います。この作品やアンナから、私自身も良い影響を受けています。
演技の授業で気づいた、自分の表現
他人と自分の違いを感じた、ご自身が覚えていらっしゃる印象的なエピソードはありますか?
印象に残っているのは、宝塚音楽学校の時の思い出です。演劇の授業で、童謡の「シャボン玉」を表現する課題がありました。そのとき、ほかの同期生は、シャボン玉を飛ばす「人」を表現していました。でも私は、自分が「シャボン玉」になる芝居を始めました。
みんながシャボン玉を吹く動きをしている中で、私は身体で球体を表現しようとしたり、浮くはずもないのに浮いている気持ちで動いたり。最後には思いきり弾けて、そのまま床に倒れました(笑)。先生は驚いておられましたが、否定も肯定もせず、そっとしておいてくださったんです。
そのときは、自分の中で自然と生まれた発想をそのまま体現しましたが、「あれ、私ってちょっと違うかも?」と思いました。そして、次第に自分を俯瞰するようになりました。
役作りのアプローチ
役に対するアプローチで、いつも心がけていることはありますか?
一番意識しているのは、脚本家の方、そして演出家の方が作品に込めた思いを、きちんと汲み取ることです。自分がどう演じたいかというよりも、まずはその作品を生み出した脚本家の言葉、そして舞台の舵を取る演出家の方が目指している方向性をきちんと理解することを大切にしています。
それらをキャッチすることができたら、今度は「自分がこの役を演じる意味は何だろう」「私を通して生み出せる表現は何だろう」と考えるようにしています。そして、自分の務める役が作品においてどんな存在なのかを考えます。最終的には「とりあえずやってみよう」と急に度胸を発揮します(笑)。
私は、いくつも演技プランを考えるタイプではなく、最初に浮かんだものをベースに作っていくタイプなので、自分の演技が変化していくことも含めてお芝居を面白いと思えるようになりました。
共演者の皆さんのちょっとした変化も受け取りたくてアンテナを張るようにしています。自分一人で考えるよりも真の理解が深まりますし、その創作時間がとても楽しいんです。
韓国オリジナル作品へのリスペクト
韓国で生まれた大ヒットミュージカル。日本初演に参加する気持ちは、いかがですか?
オリジナルミュージカルを生み出すのは、並大抵の大変さではありません。オリジナルを生み出すには相当な労力と膨大な時間が必要です。韓国に限らずブロードウェイでも日本でも、作品をゼロから生み出した方々には、心からの敬意を表します。
作品に触れたとき、その中に息づいている「魂」を感じるんです。それを大切にしたい、という思いはどの作品に対してもありますし、今回も同じです。
プレッシャーはありますが、日本版の一員になれた喜びや期待のほうが大きいです。皆さんと一緒に、どんな舞台を創っていくのか、とても楽しみにしています。
「ミュージカルになるべくして生まれた」と感じる、作品の魅力
音楽は、どんな印象がありますか?
「音楽ありきの作品」という印象です。楽曲一つ一つが、各シーンで重要な役目を担っていて、音楽の偉大さを改めて実感しました。韓国で観劇させていただいた時、本当にあっという間に感じました。幸せな観劇体験だったなと思います。あの上演時間の中に、こんなに多くの楽曲や芝居が詰まっていたのかと、日本版の台本と譜面を手にして驚きました。
相手役・小関裕太と舞台で初共演
相手役のブラウンを演じるのは、小関裕太さん。共演については、いかがでしょう。
舞台では初めてご一緒するのですが、以前ドラマで少しだけ共演させていただいたことがありました。そのときから、リラックスして言葉を交わせる方だなと思っていました。
これから稽古を進める中で、きっといろいろ話し合ったりすることもあると思います(*取材は3月)。小関さんだったら、ためらわずに相談できる気がしています。そう思える俳優の方とご一緒に作品を創るのは、本当にありがたいことです。
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演じることが好き、俳優の原点を振り返る
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<Information>
ミュージカル『レッドブック〜私は私を語るひと〜』
公式サイト
https://redbookjp.com
脚本:ハン・ジョンソク
作曲:イ・ソニョン
演出・上演台本・訳詞:小林香
音楽監督:桑原まこ
出演
咲妃みゆ ⼩関裕太 花乃まりあ エハラマサヒロ
中桐聖弥 加藤⼤悟 / ⽥代万⾥⽣ ほか
東京公演
日程:5月16日~5月31日
会場:東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
大阪公演
日程:6月27日~6月30日
会場:森ノ宮ピロティホール
愛知公演
日程:7月4日~7月5日
会場:御園座
text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。
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