ミュージカル『マリー・キュリー』主演、昆 夏美×星風まどか Wキャストインタビュー!
2023年の日本初演で大きな反響を呼んだ話題作が、今年2025年に待望の再演。二人のマリーを迎え、新たなミュージカル『マリー・キュリー』が誕生する。
本作品は、2018年に韓国で初演され、「韓国ミュージカルアワード」にて、大賞をはじめとする5冠(演出・プロデューサー・脚本・音楽賞)を受賞。これまでキム・ソヒョンやオク・ジュヒョンといった歌唱力にも定評のある韓国を代表する俳優たちが、主演のマリー役を演じてきた。ロンドンでの上演も行った韓国発のミュージカルとして、目覚ましい進化を続けている。
今回、マリー・キュリー役を演じるのは、人気と実力を兼ね備えた、昆夏美さんと星風まどかさんのWキャスト。取材中、日本を代表するミュージカル女優の一人である昆さんに、宝塚歌劇団でトップ娘役を務めた星風さんから直接質問!? 類まれな歌唱力を持つお二人は、お互いの美声に興味津々。二人の実力をもってしても非常に難しいと声を揃えて語る『マリー・キュリー』の音楽や、作品の印象などについて伺った。
(左から)昆夏美、星風まどか
ミュージカル『マリー・キュリー』の印象
本作品のマリー・キュリー役は、お二人にはどのように映りましたか?
昆夏美(以下、昆)
当時は女性が科学を研究するのはとても難しい時代であり、そこに立ち向かう姿に心を揺さぶられました。成功させないと自分自身の存在を否定されてしまう、といった内容のセリフがあり、そのような環境で生きていた女性です。そう考えると、ただ研究や発見の夢を追う物語だけではなく、いろんな犠牲を伴い、別れも経験し、幸せだけではない人生があります。だからこそ、彼女がより美しく見えて、その姿に人々は惹かれるのではないかと感じました。
星風まどか(以下、星風)
美化されたマリー・キュリー像ではない、葛藤や人間らしさに私も心を打たれました。そして、そのドラマを素敵な楽曲にのせて表現して演じる俳優の皆様の姿にも感銘を受けました。望むような環境でなくても、周囲の力を跳ね返そうとし、成し遂げたいものや守りたいものに向かって突き進む凄まじいまでのパワーをマリーは持っています。現代でも貫くのが難しいのに、一人の女性として尊敬できます。
ドラマ性の強い楽曲
マリー・キュリー:昆夏美 星風まどか(Wキャスト)、ピエール・キュリー:松下優也 葛山信吾(Wキャスト)、アンヌ:鈴木瑛美子 石田ニコル(Wキャスト)、ルーベン:水田航生 雷太(Wキャスト)
作品の楽曲に、どのような印象をお持ちでしょうか。
昆
マリーが歌う楽曲の難しさには、彼女にいろんな物事が降りかかる様子、平坦ではない人生が表現されているように思います。感情にのせて歌うことが良い方向に作用すればいいのですが、感情に引きずられ過ぎてしまうと歌をお客様に届けられなくなってしまいます。そういったミュージカルの難しい要素が連続して楽曲に詰まっていると感じます。大変で恐ろしいと思う程(笑)。ただ歌うだけでは絶対に成立しない、どちらかといえば芝居の要素を非常に多く感じる作品なので、挑戦になると思います。
星風
昆さんでも難しいと思う作品なのだと、逆に少し安心を覚えました(笑)。どこまでご一緒させていただけるか分からないのですが、稽古場で歌を聴くことができるのが今から楽しみです。自分も頑張りながら、共演者の方々の歌を聴くことができるのはとても有難いことだなと思います。共演者の方々と一緒に作品を作っていければと思います。
韓国の作曲家、チェ・ジョンユンさんによる楽曲をどのように感じますか。
昆
その1曲だけで聴かせる大きなナンバーがあるというよりも、楽曲の数々が芝居の延長で作られているイメージがあります。だからこそ、マリーの揺れ動く感情の一つひとつが音階になっているのを感じます。音は取りにくくて非常に難しいように思えるのですが、感情を理解して芝居を通していけば歌いやすくなるのではと考えます。この作品は、役の感情に近い形で作曲されているナンバーが多いという印象を受けます。そして、韓国のミュージカルはキーがとても高いですね。ほかには、2幕で再び歌われる夫ピエールとのデュエット曲など、リプライズも効果的に散りばめられていると思います。
星風
楽曲を聴いただけで涙が思わず出てしまうような、スッと心に入って寄り添うようなナンバーで紡がれている印象です。感情が楽譜に表現されていて難しく思えるのですが、逆に感情を理解して譜面と向き合って歌うことができたら、自然とメロディが役を運んでくれるのではと思います。芝居心と共に正確に譜面に向き合うこと、そのバランスを探りながら、そして昆さんの歌を聴きながら稽古ができれば嬉しいと思います(笑)。
「ありえたかもしれない」もう一人のマリー・キュリーの物語
Fact<歴史的事実>×Fiction<虚構>=ファクション・ミュージカル
史実の人物を演じることについては、いかがでしょう。
星風
歴史上の人物を演じるのは、これまでにも多く経験したことがあります。今回は、小学校でも教科書で習い、絵本や伝記も数多く存在する世界的に有名な偉人の方。でも、このストーリーの中で生きている、「ありえたかもしれない」マリー・キュリーを演じられることが新鮮です。「もう一人のマリー・キュリー」と言葉にもありますが、ただ本を読んで人物を勉強するのではなく、この世界観で彼女として生きる経験が新鮮であり、また新たな扉が開くのではと思います。
昆
これまで私は歴史上の人物を演じたことがないので、まどかちゃんがどのようなアプローチで臨まれるのか、興味がありました。マリーを知る上で情報を得るために本を読むというのは大切な過程だと思うのですが、歴史上の人物だけれど、やはり私たちの中で生まれるマリーが一番大事なのだと思います。史実と違う面もありますが、この作品の空気感の中で、全員で一緒に作り上げたマリー役を信じて力強く演じたいと思います。
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質問が止まらない!? 舞台人としてお互いが気になる!
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<Information>
ミュージカル『マリー・キュリー』
脚本:チョン・セウン
作曲:チェ・ジョンユン
演出:鈴木裕美
翻訳・訳詞:高橋亜子
出演:
昆夏美 星風まどか(Wキャスト)
松下優也 葛山信吾(Wキャスト)
鈴木瑛美子 石田ニコル(Wキャスト)
水田航生 雷太(Wキャスト)
ほか
東京公演
日程:2025年10月25日~11月9日
会場:天王洲 銀河劇場
大阪公演
日程:2025年11月28日~11月30日
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
公式サイト
https://mariecurie-musical.jp/
公式X
@mariecurie_jp
photo by 山崎あゆみ(Ayumi Yamazaki)http://ayumiyamazaki.com/
東京を拠点に建築、旅、人物と幅広いジャンルを撮影。
text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。
【SNS】 STARRing MAGAZINE
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