9月11日に起きた実話を基にしたストーリー、日本初演のブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』に咲妃みゆが出演

数々の演劇賞を受賞したミュージカル『カム フロム アウェイ』が3月に日本初演される。

2001年9月11日の同時多発テロの裏で、カナダにある小さな町・ニューファンドランドで起きた驚くべき実話を基にしているストーリー。

わずか12人の出演者のみで100人近くの役を次々に演じ、ドラマが交錯する。演劇出演を経て芝居の更なる進境著しい咲妃みゆさんが、今回の舞台や題材について真摯に語る、印象的な作品インタビューとなった。


 

作品のモチーフは、2001年9月11日に起きた実話

2001年9月11日に小さな町で起きた実話を基にしているストーリー。作品のモチーフについてはどのような思いをお持ちですか。

2001年当時、私は小学生でした。ニュースを見ながらアメリカで大変なことが起きてしまった、ということは分かりました。色々な情報が明らかになるにつれ、世界的な情勢が生んだ悲劇ということを次第に知っていきました。

あの当時、まさかこの出来事がブロードウェイミュージカルになるなんて、誰も想像をしてなかったと思います。今も大変悲しいニュースが世界中で飛び交う中で、楽しく観られる作品ではない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。辛い記憶から目を逸らさずに舞台という形で実際に起きた物語を残していこう、と決意された方々に敬意を表して臨みたいと思います。

実際にお稽古に入って楽曲に触れた時に、人々の痛みや苦しみ、葛藤が、曲調に表現されていると感じました。それをそのまま伝えなければならないな、と思っています。この作品に携われる喜びだけが私の中を占めるわけでは決してなく、責任を凄く感じております。これまで色々な舞台に関わらせて頂きましたが、また一味も二味も違った舞台に出会えた気持ちです。

12人の出演者のみで100人近くの役を次々に演じる、音楽や芝居もあるドラマ。演出手法については?

私たちは、完成形の『カム フロム アウェイ』を皆さまにお届けすることになりますが、作品が出来上がるまでに、沢山の挑戦が繰り返されてきたのだろう、と思います。

舞台美術がシンプルなスタイルに行き着いたのは、多くの視覚的な情報は必要なく、只々この物語にお客様を誘(いざな)って集中して頂きたいのでは、と感じています。その思いが、12人の出演者のみ、想像力を掻き立てる最小限の舞台セット、幕が開いたらノンストップの上演に表れているので、非常に意志が感じられる作品だと思います。


演じる役柄について

役者が次々と違う役を演じ分ける舞台。印象的な役柄について教えてください。

私はメインとして、ニューファンドランド島にある地元テレビ局のリポーター、ジャニスを演じます。彼女は新人で、就任して間も無く、この大きな出来事に直面します。町の人々と、急遽この島に降り立つことになった乗客の皆さんを何とかサポートしようと奮闘します。稽古に入ったばかり(*取材時)なのでまた捉え方が変わるかもしれませんが、現段階では、戸惑いながらも必死にこの状況に立ち向かうエネルギーを感じていて、それがジャニスのキーポイントになるのではないかと思います。

他のキャストの方々の役柄も、こういう人、という明確な説明はないのに、持ち味や性格が作品内で非常に上手く表されています。稽古をしながら、脚本と音楽のコンビネーションの素晴らしさを実感しております。非常に挑戦しがいがあるな、と意欲的に取り組んでいます。

リポーター役は、重要な一報を伝えますね。

現在は歌稽古のみ進めているので、また立ち稽古の時は違う景色が見えてくるように思います。自分の感情に引っ張られてセリフを発してしまいそうになるのですが、リポーターとしては、的確かつスピーディーに報道を届ける必要があるんだろうな…などと考えている最中です。

その他の役について、いかがでしょう。

飛行機の客室乗務員や乗客、島に住む人々、あと人間以外の役を演じることになるかと…これまで培ってきた役者としての経験をどう活かそう、と楽しみにしています。

客室乗務員役は、かなり緊迫した状況で乗客を誘導するシーンがあります。言葉数が非常に多いんです。原語の英語より日本語の語数が多いので、初歩的なことですが、絶対に噛まないように気を使っています(笑)。遅れて音楽に合わないと、次の方のセリフや曲の切り替えに影響してしまうので、しっかり務めたいと思っています。

 

稽古場の様子

刺激的な稽古場ですか?

それぞれのお仕事のご都合で、全員はまだ揃っていない段階です。物語をどう紡いでいくのか、このシーンでどのような役割を自分が求められているのか、一つ一つ確認する作業なので、脳が刺激されます。

私は今回、最年少で参加させていただきます。諸先輩方のパワーに圧倒され、感動しながら、自分も頑張るぞ、という気持ちになります。

楽曲については、いかがでしょう。

作品のオープニング曲「Welcome to The Rock」は複雑な譜面になっているのですが、日本語訳でも大変歌いやすいです。ケルティックな雰囲気もあって、大好きです。以前出演させて頂いたミュージカル『マチルダ』でもお世話になった高橋亜子さんの訳詞で、今回も本当に素敵です。日本語のリズムも大切にして下さって、勝手ながら私は絶大な信頼を寄せており、他の曲も楽しみです。

実際に、オープニング曲「Welcome to The Rock」を歌ってみた印象は?

音楽スタッフの方々、翻訳と訳詞のおふたり、そして4人のスタンバイキャストの皆様が長い時間をかけて事前に色々と練って楽曲のベースを作って下さったと伺いました。私たちも加わって稽古場で歌った時に、「おお!」と歓声が上がりました。ああ、作品が一歩を踏み出した、と皆さんがおっしゃったのがとても嬉しかったです。

楽曲によっては、女声でも歌う旋律が分かれていきます。一人一人の責任が重大なので、万全を期して挑まねば、と思っています。

 

役者としての覚悟が決まった演劇作品の次に出演、ブロードウェイミュージカルの本作

演劇作品の次に、このブロードウェイ作品に参加ですね。

演劇作品『少女都市からの呼び声』に携わらせていただき、戯曲の中の詩に声を乗せる歌い方は、ミュージカルと違う経験となりました。セリフの重み、芝居のみに集中する難しさや奥深さを体験し、より一層芝居が好きになりました。そして、もっと役者としての面白みを増していきたい、という覚悟が決まったその先に、ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』への挑戦があります。実在の人々、大事件に関わった人々の思いや苦しみ、希望、様々な感情を丁寧に表現したいと思っています。自分の身に起きた事、そのくらいの意識でお役と向き合いたいと思います。

 

非常に難しい作品に挑む、実力派俳優陣の共演者とのエピソード

共演者とのビジュアル撮影の様子を教えてください。

ビジュアル撮影は、スタジオにずっと流れていたブロードウェイミュージカル版『カム フロム アウェイ』の音楽が最終的には聞こえなくなるほどに話に花が咲いて、とても賑やかで明るい雰囲気でした。私は、いつかまた共演したいと思っていた方々、また共演させて頂きたかった方々に囲まれた嬉しさで始終落ち着かなかったのですが、皆さんが気さくに喋りかけて下さって、とても有り難かったです。

ビジュアル撮影の時から、皆様とご一緒する日々は素晴らしいものになるだろうと予感していましたが、稽古が始まった今想像以上の豊かな時間を経験させて頂いております。大変難しい作品に挑むにあたり、とても良い空気がずっと流れていて、作品が躍動し始めたことを感じます。


日本初演に向けて

2024年3月、舞台は日本初演を迎えます。

お客様が劇場に来て下さることで、初めてこの物語の出航準備が整うんだろうな、と感じております。

過去にあった出来事を、少しでも感じ取って頂けたら、こんなに嬉しいことはありません。日本初演の責務と、作品に携われる有難さを感じながら、キャスト、そしてスタッフの皆様と手を携えてこの舞台をお届けしたいと思います。もし、どんな舞台だろう、と少しでもご興味を持たれたら、ぜひご観劇くださいませ! 日生劇場、続く各地ツアーの劇場にて、皆様のお越しをお待ちしております。



「世界」を受け入れた、わずか1万人の小さな町の奇跡のような実話に基づいた物語。舞台の背景となるのは、誰もが記憶している、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件。アメリカ国内に入る予定だった38機の飛行機と7,000人の乗客・乗員は、カナダ・ニューファンドランド島にある「ガンダー国際空港」に降り立つ。突然の非常事態。次々とやってくる飛行機と乗客たち。ガンダーの人々は数日間寝る間も惜しんで、人種も宗教も言語も異なる人々のために尽くし、数日後には彼らが飛び立っていくのを見送った。

たった数日間。しかし、そこには多くの友情と愛が生まれた。

小さな町から生まれた 大きな奇跡の物語。

<Information>

ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』

【東京公演】
期間:2024年3月7日(木)~29日(金)
会場:日生劇場
*大阪、愛知、福岡、熊本、ほかツアー公演あり

公式ホームページ
https://horipro-stage.jp/stage/comefromaway2024/

脚本・音楽・歌詞:アイリーン・サンコフ/デイヴィット・ヘイン
演出:クリストファー・アシュリー
ミュージカルステージング:ケリー・ディヴァイン

翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
音楽監督:甲斐正人

出演
安蘭けい
石川禅
浦井健治
加藤和樹
咲妃みゆ
シルビア・グラブ
田代万里生
橋本さとし
濱田めぐみ
森公美子
柚希礼音
吉原光夫

スタンバイ:
上條駿
栗山絵美
湊陽奈
安福毅

(五十音順)

主催・企画制作:ホリプロ
後援:カナダ大使館

 

photo by 最上梨沙(Lisa Mogami)
http://www.lisamogami.com  
人物、ファッション、ライフスタイル、フードなど幅広い分野で活動中。
Instagram @lisamoga31

text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。

 
 

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