【来日インタビュー】デヴィッド・ホールバーグ(オーストラリア・バレエ団芸術監督)が語るバレエ芸術
5月末より始まるオーストラリア・バレエ団 2025年日本公演に先駆けて来日した、デヴィッド・ホールバーグ芸術監督にインタビューした。
アメリカン・バレエ・シアター、ボリショイ・バレエ団のプリンシパルを務めた世界的なバレエ界のスーパースターが、現役引退後の2021年にオーストラリア・バレエ団の芸術監督に就いたニュースは、大きな話題を呼んだ。その後、彼のリーダーシップで国際的な評価をますます高めているオーストラリア・バレエ団は、いま目が離せない注目のカンパニーだ。
インタビューの前半は日本公演のヌレエフ版『ドン・キホーテ』や主演ダンサーについて、後半*は芸術の魅力について語って頂く、興味深いお話となった。
インタビュー第一弾は、こちら
デヴィッド・ホールバーグ芸術監督が考える、芸術とは?
画像:David Hallberg Portrait
オーストラリア・バレエ団(以下、TAB)芸術監督のデヴィッド・ホールバーグさんが、芸術に求めるものとは何でしょうか.
私は予測できるものは、好きではありません。一番嫌いなのは、予定調和です。
驚きがあって欲しい、生命が溢れ出る感じであって欲しい、フレッシュであって欲しい、知性が欲しい、火花が起きるようなスパークさを感じたい、シャープさも欲しい。
私は芸術に、予想できないことを求めたいと思います。
素敵な回答をありがとうございます。次の質問は、ホールバーグさんはバレエの美しさを、どのように捉えていらっしゃいますか?
美しさを感じる点は、二つあると思います。まず、視覚的な美しさです。スターダンサーやコールド・バレエによる踊り、例えば『ドン・キホーテ』の舞台美術や衣裳には、ビジュアル面の美しさがあります。
もう一つは、感情です。バレエを観る人に、踊りが感情を思い起こさせることがあります。例えば『ロミオとジュリエット』や『白鳥の湖』の物語に対して、感情が生まれることの美しさです。ダンサーのパフォーマンスによっても、心に訴えるものがあります。
見たままの美しさと、感情を引き出したり呼び起こしたりする美しさの両方が、バレエにはあると思います。
日本の印象
日本に感じる印象はありますか?
日本の皆様は、いつも真摯で、忠実でいてくださる存在と感じています。
約3時間のバレエ公演でも、微動だにせずに集中して観ている姿を拝見して、愛するものを目の前にするリスペクトや忠節の心を感じました。舞台を生半可なお気持ちではなく、すべてを体験しようとしてくださる印象があります。また、日本のお客様は、私がダンサーとして約20年間踊っていた間も、シルヴィ・ギエムという素晴らしいダンサーに対しても、長い間に渡って変わらずに応援してくださいました。
芸術だけではなく他のことに対しても、日本の方々がすべての物事に対して忠実に接していると私は感じています。
会場の東京文化会館についての印象は、いかがでしょうか。
歴史のある劇場で上演させて頂けることが、非常に光栄です。これまで、数多くのスターやアーティストの方々を迎え、素晴らしい公演が行われてきた劇場です。日本での東京文化会館の存在意義を感じ、どれだけの重みのある場所かということも分かっております。
建築物としても、非常に好きな劇場です。東京文化会館でしか、今回の大掛かりなセットは実現できないと思います。豪華で贅沢な『ドン・キホーテ』のプロダクションを東京文化会館で出来るのは、色々な意味で光栄極まりないですね。
TABにとっては、15年ぶりの日本公演。ホールバーグさんが芸術監督となって来日する巡り合わせを、ご自身ではどのように感じていらっしゃいますか。
芸術監督になって4年経ちますが、とても良いタイミングで日本に来られることを嬉しく思います。現在のTABを、日本の皆様に紹介したい強い気持ちがあります。私自身は劇場の楽屋口をダンサーとしてではなく入るというのは、不思議な感じがしています。今回は私ではなく、TABの素晴らしいダンサーたちにお客様がサインを求める光景を見られるなら、それはとても喜ばしいことです。
取材エピソードの編集後記は、こちら
<Information>
オーストラリア・バレエ団 2025年日本公演
ヌレエフ版『ドン・キホーテ』プロローグ付き全3幕
オーストラリア・バレエ団芸術監督:デヴィッド・ホールバーグ
会場:東京文化会館(上野)
公演日程/主演予定ダンサー:
*出演者最新情報は、公式サイト参照
公式サイト
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/australia/
5月30日 18:30
近藤 亜香、チェンウ・グオ
5月31日 12:30
ベネディクト・ベメ、ジョセフ・ケイリー
5月31日 18:30
ジル・オオガイ、マーカス・モレリ
6月1日 12:00
近藤 亜香、チェンウ・グオ
振付:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパに基づく)
音楽:ルドヴィク・ミンクス
編曲:ジョン・ランチベリー
衣裳デザイン:バリー・ケイ
装置デザイン:リチャード・ロバーツ(バリー・ケイデザインのオリジナル映画に基づく)
指揮:ジョナサン・ロー
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
主催:公益財団法人日本舞台芸術振興会
後援:オーストラリア大使館
衣裳協力 ジョルジオ アルマーニ(参考商品)
photo by 山崎あゆみ(Ayumi Yamazaki)http://ayumiyamazaki.com/
東京を拠点に建築、旅、人物と幅広いジャンルを撮影。
text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。
【SNS】 STARRing MAGAZINE
ジャンルレス・エンタテインメントを愉しむ。
オフィシャルインスタグラムをフォロー!