【Stage Review】ミュージカル『SIX』日本キャスト版 ロンドン公演 SIX THE MUSICAL JAPAN IN THE WEST END, VAUDEVILLE THEATRE 

Vaudeville Theatre, London  ヴォードヴィル劇場

『SIX』
SIX THE MUSICAL JAPAN IN THE WEST END

Divorced, Beheaded, Died, Divorced, Beheaded, Survived
LIVE IN JAPANESE!
Tuesday 4 to Sunday 9
November 2025
VAUDEVILLE THEATRE, London


日本キャストが、ウエストエンドデビュー!

ミュージカル『SIX』日本キャスト版(記者会見の様子はこちら)がロンドンのウエストエンドで11月に公演を行い、現地の話題を呼んだ。今年初めの東京・大阪・名古屋での完売公演に続き、英国『SIX』から招待を受けた全員の出演はスケジュールの都合で叶わなかったが、実力と人気を誇るJAPANESE QUEENSが、本場ロンドンへ。2025年11月4日から9日までの限定でウエストエンドのヴォードヴィル劇場で全8公演を行い、この1週間は日本キャストが登場する特別期間となった。日本語上演に英語字幕付で上演されたこの舞台は、ロンドンで拍手と喝采をもって迎えられた。英語版が上演されている劇場で、初の外国語版(日本語版)を上演するのは、史上初の試みだ。批評家や観客の多くは、JAPANESE QUEENSのパワフルさ、ポップさやグルーヴ感を見事に音楽で表現している様子、演技や情熱を高く評価した。

『SIX』は、暴君として知られるヘンリー8世の6人の元妻たちが、自らの視点から歴史を彼の物語(His story=History)ではなくHer-storyに語り直すというポジティブなメッセージ性を持った作品。その内容が日本語で伝えられて再構築され、オリジナルのリズム感とライヴ感を損なわず、約80分ノンストップの上演をロンドンにおいても最大限のエネルギーで観客を熱狂的に巻き込んだ。英語字幕が劇場内のいくつもの箇所に表示され、emoji(絵文字)や王妃の各色を表すクイーンカラーが字幕に使われるなど、双方の国の言語表現と巧みな演出によって、英語圏の観客も日本人の観客も没入できた。

JAPANESE QUEENS IN THE WEST END
ウエストエンドに刻んだ、
彼女たちの歴史 “Her-story”

シングルキャスト、ダブルキャストで演じた日本のクイーンたちは、全員がパワフルなパフォーマンスで、劇場を楽しんでいる喜びが感じられた。初日の終演後、同列の客席にいた原作者の1人のトビー・マーロウさんに感想を伺うと、驚くべき、素晴らしい、信じられない、といった意味の「Very Amazing! Incredible!」と称賛した。現地の観客からも「素晴らしい」「ファンタスティック」「とてもいいステージ!」「あのクイーンが一番印象的だった」「惹きつけられた」など、お気に入りの日本人キャストを見つけたロンドンのクイーンダム(『SIX』のファンダムの呼称)もいたようだ。観客に響くキャストはそれぞれなので、ここではウエストエンドのJAPANESE QUEENSについて6人の王妃の役名で印象を順に記した。

CAST
Catherine of Aragon
Sonim, Anne Boleyn Meimi Tamura, Maho Minamoto, Jane Seymour Harumi, Anna of Cleves Eliana, Marie Sugaya, Katherine Howard Airi Suzuki, Erika Toyohara, Catherine Parr Sora Kazuki, Ruki Saito

ソニン(アラゴン役)、田村芽実・皆本麻帆(ブーリン役)、遥海(シーモア役)、エリアンナ ・菅谷真理恵(クレーヴス役)、鈴木愛理 ・豊原江理佳(ハワード役)、和希そら・斎藤瑠希(パー役)  
*敬称略・Wキャストは各役五十音順

キャサリン・オブ・アラゴン役は最初の王妃で、元妻のクイーンたちが順番にソロを披露する1番目を歌う。ウエストエンドデビューの盛り上がりを見事に担い、現地でも大きな喝采を受け、ここから続く1週間の成功が見えた気がした。続いてアン・ブーリン役は次のキャラクターの色合いの違いを見せることに成功し、その先の期待を確実なものにした。日本文化的な可愛らしさとパワフルな勢いが現地でも非常にうけて、BEHEADED(打首)のブラックユーモアは言葉の壁を越えて英語圏の観客も毎回大いに笑っていた。次のジェーン・シーモア役は、歌のパワーがヴォードヴィル劇場の隅々まで届くかのように、全体を包み込む深い感動を呼んだ。ロンドン在住の日本人観客は、懐かしい母国語で歌われる歌詞に自分の生き方を重ねて心から感動したそう。アナ・オブ・クレーヴス役は、日英の開幕アナウンスをダブルキャストの2人で担い、声の演技と発声がプロフェッショナルだとその訓練された実力に現地ジャーナリストが開幕時点で感心していた。前列の観客をスタンドアップさせる場面では、ロンドンのクイーンダムが率先して踊り出す日もあり、大きな盛り上がりを見せた。キャサリン・ハワード役は、このキャラクターに求められる妖艶な美しさに加えて、日本人がイメージするコケティッシュさ、繰り返される歌のフレーズに内面の痛みを想像させる考え抜かれた歌い方で、表現が新鮮に捉えられたようだ。キャサリン・パーは、クイーンたち全員を繋ぎ、重要な最後を締める役。♪「The MegaSIX」の背中を大きく反らせて舞台のセンターで魅せるポーズなど、要所要所をクールにキメる姿に現地の観客が沸いた。

改めて、ここまでの道のりに拍手を送りたい公演であり、JAPANESE QUEENSが高い実力でもって現地で迎え入れられた公演だった。個々の力を最大限に出しながら、6人のクイーン全員が魅力的に映った。

記念すべき舞台で日本人キャストの堂々たるパフォーマンスは、ロンドンで舞台を観た観客に鮮烈な印象を残し、ウエストエンドに新たな風を吹き込んだ。

英国の地に実在した悲劇のクイーンたちが舞台で輝いて残り5分間を歌う♪「SIX」、続くアンコールに、観客席は終わりを迎える切なさと満ち足りた気持ちを感じながら、国と言葉を超えた劇場全体の一体感があった。日英コラボの生バンドの音楽の魅力もあった。

新たな“her-story”(彼女たちの歴史)を、ウエストエンドに刻んだ舞台だった。

@starringmagazine_official stories
🎥カーテンコール撮影は客席からのため、映り込みなどを編集。初日の雰囲気を楽しんで!

SIX THE MUSICAL JAPAN IN THE WEST END
2025年11月4日~6日観劇 Vaudeville Theatre, London
STALLS(1階席) / DRESS CIRCLE(2階席)

*本記事はレビューのみ。上演中の舞台撮影画像はありません。

 

熱狂の様子は、リール動画など公式ソーシャルで!
@sixthemusical
@umeda_arts_theatre_uk

 

photo & text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。
Editor-in-chief of STARRing MAGAZINE. Past positions include the performing art department of a CS broadcaster, AD/PR/SP marketing for YSL Beauty, and managing editor of a culture and luxury magazine. She has covered stories in more than 70 cities in 25 countries and interviewed over 100 people, including top stars and global artists in music, theater, and other genres.

掲載予告
【STARRing MAGAZINE】今秋ロンドンで話題の舞台を現地で観劇取材!

SIX(ミュージカル『SIX』日本キャスト版)*本記事 
以降、順次掲載
La Fille mal gardée(英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル 金子扶生 主演)
The Hunger Games On Stage

ロンドンのお薦めのホテル、秋からクリスマスに色づく街の様子は、SPOTLIGHT の旅記事で掲載!

Stay in LONDON

The Dorchester (Mayfair, London) 
45 Park Lane (Mayfair, London) 
The Prince Akatoki London (Marylebone) 

 

edited by STARRing MAGAZINE 編集部

 
 

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