【Stage Review】La Fille mal gardée 英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル 金子扶生 主演 THE ROYAL BALLET at the Royal Opera House, London

The Royal Ballet ©2025 RBO. Photographed by Andrej Uspenski

The Royal Ballet ©2025 RBO. Photographed by Andrej Uspenski

 

フレデリック・アシュトン振付『リーズの結婚』(原題La Fille mal gardée)は、英国ロイヤル・バレエの魅力を表す代表作のひとつである。素朴な美しい田園風景を舞台にしたロマンティック・コメディには、アシュトン特有の難易度の高い振付、ダンサーの身体を通して語られる豊かな感情表現が盛り込まれている。そして、物語にはそれぞれの登場人物への温かい愛情が感じられる。ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスで観劇した2025年11月8日のマチネは、その魅力が表現された公演だった。

英国ロイヤル・バレエ団の日本人プリンシパル・金子扶生(かねこ・ふみ)が主演、リーズ役が作品の世界観を牽引する。アシュトン特有の細かく難易度の高いステップを音符に合わせて精緻に刻み、軽やかで俊敏な足捌きには、リーズの頭の回転の速さや快活な性格が感じられた。一方で、メロディと呼応する伸びやかな上半身には、愛らしい表情と共に、恋する少女の感情が溢れていた。10月にロール・デビューを果たした彼女が、舞台上で活き活きとした輝きを見せた。

The Royal Ballet ©2025 RBO. Photographed by Andrej Uspenski

The Royal Ballet ©2025 RBO. Photographed by Andrej Uspenski

The Royal Ballet ©2025 RBO. Photographed by Andrej Uspenski

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アシュトン振付の粋、リボンの踊り

恋人同士が踊るリボンの踊りは、アシュトンの粋な振付である。長い1本のリボンを手にしたリーズと農夫の若者コーラスが、「あやとり」をするように、編み込んで近づいていく。この楽しい遊びのような場面には、集中力の高さが要求される。リボンは常に張りを失わず、どちらか一方がリードするのではなく、お互いの呼吸と微細な感覚が等しく保たれなければ成立しない。2人は、この踊りを見せ場として観客に鮮やかに見せ、恋愛の感情として表現することに成功した。劇場には親密な空気感が生まれ、恋人同士の信頼感や愛情が感じられた。

プリンシパルでコーラス役のマシュー・ボールは、明るく誠実な青年像をまっすぐに伝えてくれた。優れたテクニック、華やかな姿、ヒロインを包み込むような終始安心感のある踊りで、金子が踊るリーズ役を的確に支えた。パートナーシップの相性の良さは、恋人との関係を誠実に見せる包容力の表現にも繋がった。

本作において欠かすことのできない存在が、アラン役である。リーズの母が結婚を望む、個性的な愛すべき金持ちの息子である。近年、ますます活躍の幅を広げる英国ロイヤル・バレエ団の日本人ソリスト、中尾太亮(なかお・たいすけ)が踊った。目立つ場面を与えられているこの難役を単なるコミカルな人物としてではなく、確かな踊りのテクニックに裏打ちされた人間味のある役柄として演じた。わざと不器用に見せている動きの中に、ぶれない軸があり、テクニックが際立った。コメディとして安心して観ることができ、笑いを誘いながら品を失わないのも魅力であった。

男性ダンサーが踊るリーズの厳格な母、未亡人シモーヌ役のトーマス・ホワイトヘッドは、的確な舞台センスを発揮し、要所要所で作品全体を締めた。民族舞踊に影響を受けた木靴の踊りの振付では、様式と独特のリズムに合わせながら、絶妙なバランス感覚でユーモラスに踊り、名場面で存在感を示した。

The Royal Ballet ©2025 RBO. Photographed by Andrej Uspenski

The Royal Ballet ©2025 RBO. Photographed by Andrej Uspenski

英国ロイヤル・バレエ団の現在を体現する舞台、終演後の拍手喝采

英国ロイヤル・バレエによる『リーズの結婚』は、久しぶりの上演となった。時代を超えて愛され続ける理由は、幸福な結末はもちろん、そこに至る過程にある。のどかな村の日常生活や祝祭を見事にバレエの踊りに置き換えて、洒落たユーモアと愛情たっぷりに描く、アシュトン技法こそが作品の真骨頂である。

金子扶生は、その魅力を現代的な感性で鮮やかに体現した。可憐さの奥に、身体全体を使って役の意志を宿すリーズ像は、作品がフレッシュな輝きをもって息を吹き返したことを物語っていた。キャスト全員がそれぞれの役割を担った舞台は、英国ロイヤル・バレエが培ってきた伝統と、現在の同団を牽引するスターたちの魅力が結集した公演だった。

終演後のロイヤル・オペラ・ハウスは、万雷の拍手喝采に包まれた。主演の金子扶生&マシュー・ボールのペアは何度ものアンコールに応え、惜しみない賛辞の拍手が劇場にいつまでも続いた。

 

THE ROYAL BALLET
La Fille mal gardée

CHOREOGRAPHY Frederick Ashton

CAST
Lise:Fumi Kaneko 金子扶生
Colas:Matthew Ball
Widow Simone:Thomas Whitehead
Alain:Taisuke Nakao 中尾太亮


Royal Opera House, London 
SATURDAY 8 NOVEMBER 2025 1.30PM

2025年11月8日 13:30開演

ロイヤル・オペラ・ハウス
photo by STARRing MAGAZINE

text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。
Editor-in-chief of STARRing MAGAZINE. Past positions include the performing art department of a CS broadcaster, AD/PR/SP marketing for YSL Beauty, and managing editor of a culture and luxury magazine. She has covered stories in more than 70 cities in 25 countries and interviewed over 100 people, including top stars and global artists in music, theater, and other genres.

英国ロイヤル・バレエ団
https://www.rbo.org.uk/about/the-royal-ballet

協力
THE ROYAL BALLET

 

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