【舞台レポート】新国立劇場オペラ『シモン・ボッカネグラ』

11月15日に、新国立劇場オペラの『シモン・ボッカネグラ』が開幕した。公演初日は、天皇陛下が御鑑賞され、オペラパレスは一層華やいだ雰囲気に包まれた。

『シモン・ボッカネグラ』は実在の初代ジェノヴァ総督シモン・ボッカネグラを題材にしたヴェルディ作曲の傑作オペラ。本作品は、大野和士オペラ芸術監督が自らタクトを振って、演目の力を最大限に引き出している。

エクサン・プロヴァンス音楽祭総監督を現在務めている演出家ピエール・オーディによる、緻密ながら大胆な演出が印象的な新制作で上演。現代アートのアニッシュ・カプーアとのコラボレーション作品であり、フィンランド国立歌劇場及びテアトロ・レアルとの共同制作で新国立劇場の初演後にヘルシンキ、マドリードでの上演が今後予定されている。

海洋国家ジェノヴァに渦巻く恩讐と愛のドラマを、舞台美術や衣裳の赤、黒、白といった色彩がメタファーとなるスタイリッシュな見せ方で直感的に表現し、人間の根源的な感情を鮮やかに描き出して浮き彫りにする。

ヴェルディの作品は、その類稀な音楽に見合う「声」を必要とする。魅力的な舞台を作るスタッフ陣のもと、一堂に会したのは、世界最高峰の歌手たち。最強のスター歌手を中心に、望み得る豪華で盤石な布陣だ。

政治的な争い、親子や恋人の愛憎、和解と希望が入り組む複雑な人間関係が、互いの個性を表現する緊密でドラマティックな歌声で展開される。

主役シモンにヴェルディ・バリトンのロベルト・フロンターリ、バスの至宝リッカルド・ザネッラート、実力派のシモーネ・アルベルギーニ、日本人歌手の須藤慎吾が名を連ねる。複雑な境遇で揺れ動くヒロインには、叙情的な高音も舞台姿も美しいソプラノのイリーナ・ルング。相手役の恋人を、新国立劇場初登場で注目のテノール、ルチアーノ・ガンチが務めている。

ルチアーノ・ガンチは、高い前評判をも超えてくる突き抜けるような声の輝かしさ、重厚なメインキャスト陣との拮抗した歌声と演技、心を揺さぶる感情表現で役の心情を客席に訴えかけた。イリーナ・ルングが、繊細な表現とたおやかな存在感で観客を惹きつけ、情感溢れるコンビの歌唱だった。

至宝の歌声が堪能できるアリアの数々、二重唱や重唱、男声の力強い合唱と聴きどころが満載。ヴェルディ中期の名作で、特に男声低音キャラクターの魅力が凝縮されている作品だ。

新国立劇場初登場の作品、『シモン・ボッカネグラ』は、11月26日まで!

 

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

<Information>

2023/2024シーズン

ジュゼッペ・ヴェルディ
シモン・ボッカネグラ <新制作>
Simon Boccanegra / Giuseppe Verdi
プロローグ付き全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

【指 揮】大野和士
【演 出】ピエール・オーディ
【美 術】アニッシュ・カプーア
【衣 裳】ヴォイチェフ・ジエジッツ
【照 明】ジャン・カルマン
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト
【シモン・ボッカネグラ】ロベルト・フロンターリ
【アメーリア(マリア・ボッカネグラ)】イリーナ・ルング
【ヤコポ・フィエスコ】リッカルド・ザネッラート
【ガブリエーレ・アドルノ】ルチアーノ・ガンチ
【パオロ・アルビアーニ】シモーネ・アルベルギーニ
【ピエトロ】須藤慎吾
【隊長】村上敏明
【侍女】鈴木涼子

【合唱指揮】冨平恭平
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

共同制作:フィンランド国立歌劇場、テアトロ・レアル
Co-production with Finnish National Opera and Ballet, Teatro Real Madrid

公演日程
2023年11月15日(水)19:00
2023年11月18日(土)14:00 
2023年11月21日(火)14:00 
2023年11月23日(木・祝)14:00 
2023年11月26日(日)14:00  

会場:新国立劇場 オペラパレス

公式サイト
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/simonboccanegra/

 

text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。

 
 
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