YAMANASHI GASTRONOMY 山梨・北杜  美酒美食のペアリング

美しい風景を眺めながら、地元山梨の美味しいお酒と料理を味わう“YAMANASHI GASTRONOMY”。それは、とても豊かな時間だ。

山梨・北杜エリアの仏・伊・和・中のシェフとソムリエが集まり、まさにそんな時間を愉しむ、やまなしの県産食材と県産酒のスペシャルペアリングが今年11月に開催された。


YAMANASHI GASTRONOMY

中心となったのは、「やまなし美食コンソーシアム」のメンバーである、鈴木信作シェフ。「やまなし美食コンソーシアム」は、県内で活躍するシェフやソムリエなどで構成され、新しいメニューの開発や、食文化の形成、やまなしの歴史や観光の魅力と連動した取り組みを行っている。

場所は、山梨県北杜市にある鈴木信作シェフのレストラン「Terroir 愛と胃袋」。歴史を感じる空間の店は、かつて宿場町だった集落の一角の大きな古民家を改装してレストランにしており、共に開業した奥様の石田恵海が店のマダムを務めて客人を出迎えている。一棟貸しの宿「旅と裸足」も併設している。

山梨・北杜エリアの仏・伊・和・中のシェフとソムリエの5人が、地元の食材を中心に活かしたコースを仕立て北杜市の酒を合わせて構成。この土地の食文化を支える自然の豊かさが実感できる、最高のペアリングを提供した。

鈴木シェフが「移住して7年になります。県の皆さんと、友人のシェフやソムリエとタッグを組んで発信できることが本当に嬉しく、心より感謝しています」とコメントした。

 

参加シェフ&ソムリエ

Terroir 愛と胃袋 鈴木信作

1979年、長野県生まれ。15歳から日本料理店で修業を積んだ後、フレンチへ転向。フレンチ界の鬼才、植木将仁シェフの「レストランJ」ほか数 店を経て2011年に独立。東京・三軒茶屋で4年間営業後、2017年に八ヶ岳で移転開業。自然のなかの遊びと学びと恵みを料理に生かすことを信条とする。

秀よし 櫻井秀義

1974年、千葉県柏市生まれ。寿司職人の父の背中を見て和食料理人を志す。東京白金、南麻布の和食料亭での修業を経て、「リゾナーレ小淵沢」 和食料理長に。北杜市の自然、水、食材に魅了され、2008年独立開業。全国から送られて来る鮮魚と八ヶ岳野菜と向き合い、日々精進を重ねている

Chinese restaurant HUKU笑i 羽田野博司

1976年、大分県生まれ。調理専門学校を卒業後、東京・神奈川の中国料理店などで修業を経て、自然豊かな八ヶ岳南麓で2019年に独立開業。店名のようにお客様に笑顔になってもらえるおもてなしと化学調味料は使用せず食材の旨味を存分に味わえる中国料理を提供している。

Prosciutteria Morimoto 森本慎治

1973年、神奈川県生まれ。2002年に八ヶ岳に移り住み イタリア料理店を開店。2009年より豚肉と天然塩だけでつくる完全無添加の生ハムづくりに取り掛かる。生ハムやワインを楽しむ店の意味を持つ「Prosciutteria」を看板とし、生ハム職人とイタリアンのシェフを両立。

Booshino 鈴木忍

1981年、山梨県生まれ。ホテルの専門学校卒業後、山梨県内のホテル、都内のミシュラン星付きレストランで修行を積み、2011年にソムリエ資格取得。後に北杜市へUターンし、フリーランスのソムリエとして北杜市内を中心とした飲食店をサポートしながら地域との交流を深め、2022年にワインバーを開業する。


山梨県・北杜の食材を活かしたペアリング


山梨県・北杜は、山々に囲まれた八ヶ岳の麓で風光明媚な地。

山梨県は、日本ワイン発祥の地として、生産者やワイナリーも有名だが、美味しいのは実はワインだけではない。さまざまな種類の美酒があり、地域の食材を使った料理とのペアリングが愉しめる。国の指定で、正しい産地と確かな品質の証しである「GI」(=酒類の地理的表示制度Geographical Indication)。ワイン・日本酒の2つの酒類でGIが誕生したのは、山梨県が全国初である。

天候、水に恵まれている北杜市には、ビール、ワイン、日本酒、焼酎、ウィスキーと上質な酒が揃っている。この日のコースには、「GI」を取得した酒も登場した。

最初は、アミューズから。明野大根の唐揚げ(秀よし)、汲み出し豆腐 発酵大豆ソース(HUKU笑i) 、生ハムスプレッドのクロスティーニ(Morimoto) 、香茸クロケット(Terroir愛と胃袋)と、それぞれのシェフの魅力が一皿に詰まったオールスターズによって作られた逸品。

アミューズ
+ 八ヶ岳タッチダウン HOKUTO Japanese pilsner 

ガラスの上には、鈴木信作シェフによる、天然のきのこ「香茸(こうたけ)」とライスを詰めたクロケット。上に、竹炭のチップスとパルメジャンチーズをのせてある。熱々の揚げたてで提供された石の上の串は、櫻井秀義シェフが小淵沢で作られている紫色の紅しぐれ大根を特別な出汁で炊いて唐揚げに。手前のスプーンは、羽田野博司シェフの豆腐料理で、大豆に豆板醤の辛味や風味など10日ほど漬けたものを細かくしてソースにしている。四角いクロスティーニは、森本慎治シェフによる自家製生ハムとオリーブとドライトマトのオイル浸けを合わせたもの。

ペアリングを選んだのは、県産酒を知り尽くす鈴木忍ソムリエ。

最初のお酒は、ビールの「八ヶ岳ビール タッチダウン」。使用されている北杜市原産の「カイコガネ」は、日本初の国内産ホップ品種だそう。モルトが豊かで雑味のないクリアな味わいは、シェフたちが作る発想豊かでバリエーションに富んだアミューズにぴったりだった。

1皿目は、前菜(冷菜)の生ハム。「Prosciutteria Morimoto」森本慎治シェフが作る自家製無添加生ハム「八ヶ岳生ハム」は、山梨県産ブランド豚を天然塩と八ヶ岳の風のみで仕込んでいる。信頼できる地元の猟師と連携して、その後に八ヶ岳からの冷涼で乾燥した風で熟成させ(八ヶ岳おろし)、自然の恵によって生ハムが出来上がる。

生ハムと相性がいい北杜市産のお米と山梨県産の桃で作ったビネガーによる酢飯、カレー風味にした北杜市・津金(つがね)という地域のりんごの温かいスープ、地元の岩原果樹園から西洋梨ラ・フランスを用意。猪の生ハムと酢飯が合うのは、森本シェフならではの工夫による、驚きの体験だった。

前菜(冷菜)
八ヶ岳生ハム3種盛り <12カ月熟成、24カ月熟成、野生猪肉70カ月熟成>(Morimoto)
+ city farm シャルドネ 2022

一番左が、1年間熟成の12ヶ月のクリスタルポークの生ハム。隣の赤みの強いものが猪で、特別に提供された丸5年以上60ヶ月かけて熟成されたもの。右が12ヶ月と同じ豚の生ハムの24ヶ月。スライスしたてのフレッシュさで提供され、熟成感の違いでも味わいが微妙に違う食の妙が感じられる。

生ハムに合わせたのは、山梨県の会社city farmが白州で葡萄栽培をしたシャルドネ。フランス産のシャブリにも似た、シャープですっきりとした爽やかな味わいが生ハムに合う。

続いて、「秀よし」の櫻井秀義シェフの前菜(温菜)。今回は、八ヶ岳の清流で獲れた鱒(ます)を真薯(しんじょ)のケーキにして、柔らかく調理したごぼうの筒と唐揚げに、かつら剥きのごぼうを上に飾った。北杜市産の白肌ごぼうは、白くて柔らかく、香り高い特長を持つ。

前菜(温菜)
八ヶ岳湧水鱒の真薯 白肌ごぼう煎餅添え(秀よし)
+ 武の井 純米吟醸 ひとごこち 

ペアリングの日本酒は、武の井酒蔵の名を冠し、北杜市産の酒米を使った「武の井」。杜氏(とうじ)は鈴木ソムリエの同級生だそう。「武の井」ブランドは「青煌(せいこう)」というお酒でも知られている。「武の井」の後味はなめらかで爽やかな味わい。ほんのりメロンの香りと最後に若干のビターな感じが和食と合う。

次は、「Chinese restaurant HUKU笑i」の羽田野博司シェフ。「甲州地どりの蒸しスープ」は、中国料理のシャンタン(スープ)を応用した地鶏の蒸しスープ。北杜市の干し椎茸を使用している。通常は金華ハムなどを入れて煮詰めるものに加え、今回は「Prosciutteria Morimoto」のハムの骨からも出汁を取って、北杜市白州町の酒蔵の仕込み水を使ったスープはクリアで力強い味がした。

スープ
甲州地どりの蒸しスープ(HUKU笑i)
+ シャトー・シャルマン セミヨン釜無2000

ペアリングは、北杜市白州町を流れる釜無川の近くで栽培している欧州系の葡萄品種セミヨンを使ったワイン。今回はシャトー・シャルマン セミヨン釜無をセラーで熟成させたヴィンテージを合わせ、甘味と酸味のバランス良い古酒の風味が地鶏の旨味を引き立たせた。

魚料理
陸作信玄えび ブイヤベースソース(Terroir愛と胃袋)
+ GRACE WINE ロゼ 2021

魚料理は、「Terroir愛と胃袋」鈴木信作シェフによる海老のブイヤベース風。海のない山梨で温泉水をかけて養殖される海老の旨味と合わせるのは、GRACE WINEのロゼ。辛口でしっかりとしたボディの味わいは、海老の美味しさにも負けず、見事な料理とワインのマリアージュ。


八幡芋の台湾式おこわ(HUKU笑i)
+ 武の井 長期樫樽熟成 純米焼酎 八ヶ岳の舞

蒸し器の蓋を開けた時に、羽田野博司シェフの華やかな台湾式おこわに歓声が上がった。北杜市のもち米は新米で、水分を含みもちもちとし、山梨県の里芋と共に食感が愉しめる。

ペアリングは、ウィスキーのような味わいの7年熟成した純米焼酎「八ヶ岳の舞」。県産の米で醸した、樫樽熟成だ。米焼酎の優しくふくよかな味わいが、おこわと合う。冷たすぎると料理に合わず、熱すぎると酒の香りが出過ぎる、という鈴木忍ソムリエの配慮で人肌くらいの温度の仕込み水で割っている。

肉料理
ジビエ<鹿、猪、野鳥>のトゥルト 赤ワインソース(Terroir愛と胃袋)
+ アケノ・ヴェニュス カベルネ・ソーヴィニヨン 2020

山梨県では、ジビエが盛んだ。鈴木信作シェフの一皿は、真ん中が鴨肉、周りを鹿と猪が囲むように、ちりめんキャベツで巻いてパイ包みにしている。セロリとビーツのピューレ、フォンドボーベースの赤ワインソースを絡め、フランボワーズビネガーが酸味としてほのかなアクセントになっていた。

メインの肉料理に合わせるのは、日照時間が日本一と言われる北杜市明野町で親子二代がワインづくりをする「アケノ・ヴェニュス」の赤ワイン。カベルネ・ソーヴィニヨンは色がしっかり出て果実味もスパイシーさもあり、なめらかな味わい。ベリー系の味わいがジビエの料理とマッチする。アロマも味わいも広がるタイプのブルゴーニュグラスで、より特色を感じることができた。

水菓子のデザートは、櫻井秀義シェフのプリン。北杜市白州町の老舗酒蔵「七賢(しちけん)」の近くで作られている柚子を使用してプリンにしている。生地には柚子の皮をすり込み、上のジュレは柚子の果汁。キャラメルソースにも柚子の果汁を絞って爽やかなカラメルソースに仕上げ、すっきりとした爽やかなデザートに。

デザート
柚子プリン 柚子ピール甘露煮(秀よし)
+ 七賢 山ノ霞

GIを取得した「七賢」は、白州の美味しい水を使った、お米のスパークリングワインで知られている。「山ノ霞」もシリーズの一つで、「ひとごこち」と「ゆめごこち」という米を使っている。シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で作られ、「澱(おり)」の沈殿の具合によっては、ボトルの最後の方は乳酸味が感じられる。甘すぎない甘味が、柚子プリンと絶妙にマッチする。

締め括りには、「Terroir愛と胃袋」から、どんぐりフィナンシェなどのミニャルディーズや和紅茶がふるまわれた。

(左から)鈴木忍ソムリエ、羽田野博司シェフ、鈴木信作シェフ、櫻井秀義シェフ、森本慎治シェフ

作家による店の器の数々も料理を引きたて、土地にインスピレーションを受けたシェフやソムリエ、ア―ティストが高い技術で共演するコラボレーションだった。

山梨の酒や土地の恵みを活かした美味しい料理とのペアリングは、県内各地の料理店でも味わうことができる。

名シェフたちをも移住させるくらいに魅了する、山梨県の、自然の恩恵と食材。北杜をはじめとする「美食王国やまなし」には、新しい出会いと素敵なひとときが待っている。

<Information>

「ワイン県やまなし」の美酒・美食
 
https://www.pref.yamanashi.jp/kankou-sk/bishoku/top_page_since_2022.html

鈴木信作シェフ Terroir愛と胃袋
山梨県北杜市高根町長澤414
https://aitoibukuro.com/
宿「旅と裸足」も併設

櫻井秀義シェフ 秀よし 
山梨県北杜市小淵沢町上笹尾3332-171
https://kobuchizawa.net/hideyoshi/

羽田野博司シェフ Chinese restaurant HUKU笑i
山梨県北杜市大泉町西井出8240-3559
https://www.instagram.com/hukuwarai_chineserestaurant/

森本慎治シェフ Prosciutteria Morimoto
山梨県北杜市大泉町西井出8240-3178
https://morimoto-mt8.com

鈴木忍ソムリエ booshino
山梨県北杜市小淵沢町1035-1 トミコビル1F
https://www.instagram.com/booshino_vins_et_plus/

 

text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。

 
 
 

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