東京バレエ団が14年ぶりに挑む『オネーギン』 4人のプリンシパルが語るジョン・クランコの傑作
柄本弾、沖香菜子
photos: Shinji Hosono
宮川新大、秋山瑛
photos: Shinji Hosono
ジョン・クランコ振付の傑作バレエ『オネーギン』が、2026年11月、東京バレエ団で14年ぶりに上演される。10月13日、東京バレエ団のスタジオで公開リハーサルと囲み取材が行われ、オネーギン役の柄本弾、宮川新大、タチヤーナ役の沖香菜子、秋山瑛が作品に向き合う思いと稽古の進捗について語った。
アレクサンドル・プーシキンの小説を原作とする本作は、1820年代のロシアを舞台に、憂鬱の貴公子オネーギンと誠実な女性タチヤーナのすれ違う愛を描く全3幕のバレエ。
東京バレエ団では2010年、2012年に上演されている。今回は団内オーディション(トライアウト)を経て選ばれた主要キャストを中心に、クランコ作品の振付指導者ジェーン・ボーンのもとで稽古が進められている。
オネーギン役の宮川新大、タチヤーナ役の秋山瑛
タチヤーナ役の沖香菜子、グレーミン役の安村圭太
公開リハーサル&囲み取材
photos: Shoko Matsuhashi
4人のプリンシパルが語る『オネーギン』
(左から)柄本弾、沖香菜子、秋山瑛、宮川新大
photos: Shoko Matsuhashi
振付を踊ることから、その先の表現へ
役に挑む現在、技術的な課題を一つずつクリアしていく稽古の様子が語られた。
柄本「正直なところ、今はまだ振付に追われている段階です。メインのパ・ド・ドゥや基礎的なテクニックを詰めているところです。テクニックを毎回クリアできるようになって、感情の表現を教わる段階に進めれば、と思います」
宮川「今日できたことが次の日にはできなくなる、その繰り返し。パートナーとのタイミングや、クラシックとは違う重心のかけ方や組み方などに試行錯誤しながら取り組んで、とても勉強になっています」
沖「トライアウトで振付を教わったときと、実際にタチヤーナ役を演じることが決まった現在とでは、向き合い方が変わりました。確実に踊れるようになって、クランコ作品の同じ振付が繰り返される意味や表現を考えたいと思います」
秋山「難しい振付に追われるなかでも、少しずつジェーン先生からの導きやヒントをいただけるようになってきました。音楽が頭から離れないほどで、ずっと考えてしまい、それ位にやりがいのある作品です。取り組めて本当に嬉しいです」
過去のクランコ作品の指導経験も踏まえた教え
ジョン・クランコの作品に数多く携わり、クランコ作品の指導を担うジェーン・ボーン氏が直々のリハーサルをしている。
沖「ジェーン先生が凄いのは、これまで踊ってきたダンサーたちの経験も教えてくださることです。過去に同じ役を踊った、ダンサーの気持ちや状況も伝えてくれるので、迷いなく踊れるようになれると思います」「振付やカウントにとらわれすぎると機械的に見えてしまう可能性もあるので、教えを守って落とし込んだ上で、自分なりの表現を加えていきたいです」
秋山「本当にすべてを知っていらっしゃいます。舞台を観ていると印象的な振りが沢山あって、ディテールが作品を作っているのだと感じます。腕の角度や足の使い方が少し違うだけで、見え方は大きく変わります」「自分の感覚では約2センチほどの差でも、ほんのわずかな動きの違いで、お客様に違う印象を与えることがあります。細部へのこだわりと、踊り継いできた方々の積み重ねが、作品全体にあると思います」
基礎は感情を伝えるために、身体の動きが言葉に
基礎の大切さについて、身体の動きやステップを言葉に例えて話してくれた。
秋山「幼い頃には限られた言葉しか話せなくても、成長するにつれて語彙が増え、伝えられることが豊かになるように、ダンサーにとってステップは身体表現が言葉のようなものだと思っています。振付を踊るために踊るのではなく、その時の感情を表現するために振付がある。クランコさんが、言葉を私たちに貸してくれているように感じます。この作品は難しくて、表現することが多すぎて溢れるほどの難しい役ですが、ベースがないと何も表現できない。そのためにも基礎の技術が必要と感じています」
繰り返し現れる、オネーギンのポーズ
公演ビジュアルにも使用されている、オネーギンの印象的なポーズがある。内面について語られた。
柄本「周囲に馴染めない、周りの空気に馴染もうとしない気持ちが表れているのではないか、と感じています。意味について、まだ詳しい指導の段階ではありませんが、今後テクニックを習得した後に細かな部分を詰めていきたく思います」
宮川「ジェーン先生から、ステップを重く、と言われました。僕は、オネーギン自身が抱えている重たいものが、あのポーズに繋がっているのではないかと思っています。背中に何か大きなものが乗っているような重さがあるからこそ、その後にワルツのステップを踏む明るい場面とのギャップが印象的だと思っています」
物語の最後に見せる表情
物語の最後にタチヤーナやオネーギンが見せる表情については、現時点で具体的な指定は受けていないそう。ダンサー自身の表現が生まれる余地も残されている。
沖「表情のことは特に今は言われていなくて、そこに対しての意味は教えてもらっていないんです」
秋山「ジェーン先生からは、後ろに行きすぎずに喉のラインを見せる、手首のことなどポーズについて指導を受けましたが、表情の指定は言われていません。だからこそ、それぞれ違うのかなと思います。自分が最後にどう表現するのか、これから考えていきたいです」
宮川「オネーギンの感情も、悲しみとして表す人もいれば、怒りとして表す人もいます。本当に指定はないので、どういう風にするか考えたらどうなるだろうと思っています」
*質疑応答より一部抜粋
チャイコフスキーの音楽とともに、人物の心の変化をドラマティックに描き出す本作品。ミラノ・スカラ座の舞台美術・衣裳が舞台を美しく彩る。
振付を踊る技術と、人物の感情を身体で伝える表現。その両方を追求する4人のプリンシパル。東京バレエ団が14年ぶりに挑む『オネーギン』で、それぞれがどのような人物像を舞台に描いて踊るのか注目したい。
東京バレエ団 / The Tokyo Ballet / オネーギン / Onegin / ジョン・クランコ / John Cranko / 柄本弾 / 宮川新大 / 沖香菜子 / 秋山瑛
<Information>
東京バレエ団『オネーギン』
Production of Teatro alla Scala of Milan
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
日程
2026年11月6日 19:00
2026年11月7日 13:00/18:30
2026年11月8日 13:00
会場:新国立劇場オペラパレス
text by STARRing MAGAZINE 編集部