ルイーズ役の夢咲ねねが語る、宝塚歌劇OGキャストの華麗なるステージ『8人の女たち』

宝塚歌劇OGキャストによる、極上のミステリー劇が8月に開幕! フランスのフランソワ・オゾン監督によるミュージカル映画化も話題になった傑作戯曲が、元宝塚歌劇団トップスターたちの豪華顔合わせにより、ストレートプレイ版として上演される。美しく謎めいたルイーズ役を演じるのは、元星組トップ娘役で女優の夢咲ねねさん。ご自身の役について、歌劇団卒業後を振り返ってのお話も伺った。


ファッショナブルな『8人の女たち』

ルイーズ役の衣裳は「紫」。可愛らしくもミステリアスですね。

私は、事件の舞台となるマルセル家のメイド、ルイーズ役を演じます。自分の役の髪型もファッショナブルで、パリのファッションショーに出るような感じの印象です。私が思い描いていた『8人の女たち』と違うと思いましたが、キャストの皆さんの撮影された写真が1枚になったときに、とてもしっくりきました。「2022年の現在、これが梅田芸術劇場で演じる、“いま”の『8人の女たち』で、かっこいい!」と。私たちでなければ、出来なかったスチールと感じています。

映画で見たメイド服の印象が強く、スチール撮影をしたときに衣裳の襟や手首にちょっとそういうあしらいがあったので、気持ち的には入りやすいポイントとなりました。映画のルイーズ役は、謎めいていて、クールでセクシー。でも、ちょっと性格が悪いな、と感じました(笑)。

今回は、宝塚OGの共演者の方々とご一緒ですね。

「宝塚」という共通項があるだけで、学年が離れていても、宝塚出身というだけで一つの絆で繋がれていると感じます。お互いの信頼感があるので、会ってすぐ自分を出すことができます。それはこの作品に関してとても有効で、信頼した上でぶつかりあえるというのは恵まれている環境だな、と思います。

ご自身の役柄について、どのように思われますか。

映画で演じられた女優(フランス女優のエマニュエル・ベアール)の方が凄く素敵で、色っぽくて、目が離せませんでした。登場人物が心理戦を繰り広げているなか、彼女は、クールで静か、淡々としているように見えます。我(われ)関せず、といった達観しているような役ですが、目で物語る芝居が素敵だったので、そのエッセンスを自分の演技にも取り入れられれば、と思っています。一見クールということは、実はその裏腹に内側にはかなり熱い情熱が燃えたぎっていて、強欲な部分もあるのではないか、と。そうでなければ、“8人の女たち”のなかで渡り合えないのでは、と想像するので、そういった部分も深く追求できれば、と考えています。 

 

ミステリー作品が好き

夢咲さんは、ミステリー作品がお好きと伺いました。演じる側はいかがですか?

きっと、演じるのも楽しいと思います!

小さい頃から、映画やドラマでミステリーを見ることが多くて、いっしょになって推理をするのが好きでした。両親も好きなので、母から面白いミステリー小説を教えてもらって読むこともありました。海外サスペンスやミステリードラマも見ます。昔なら、奥様やCAの方など女性が活躍する探偵物が好きでした。

追い詰める役も演じてみたいけれど、犯人には同情できる強い情念を持つ動機も多いので、そのような役柄もきっと演じがいがあると思います。今回演じるルイーズ役が持つ情感と、少し共通しているように思います。

今回の『8人の女たち』は、外から様子を覗き見しているような気分になる作品だと思います。お客様に直接訴える、というより、心の奥に渦巻く情念や裏の顔といったもの、女たちがぶつかり合っている様子を観客の方々がどれだけ愉しく覗いていられるか、興味を持っていただけるか、が大切だと思っています。それには演者たちの熱量であったり、「今起きたばかりの事件」という毎回の演技の新鮮さであったりが、必要になってくると思っています。それを、出演者が8人のみの舞台で、お芝居一択の挑戦ができるのは難しいことですが、やりがいがあると感じています。

 

宝塚歌劇団を卒業後7年。いま振り返って思うこと

舞台人生を振り返り、このタイミングで本作品に出会ったお気持ちはいかがでしょうか。

いま思うと、歌劇団にいた頃は守られていたと感じています。やはり、自分の良いところ、悪いところをわかってくれる同じ組の仲間たちがいて作品を作り上げていましたので、外に出て初めての方々とすぐに濃厚で熱いお芝居をすることは、毎回難しいと感じていました。

在団中は、現実にいないような理想の女性を追い求め、フェアリーでなければならないと本気で思っていましたので、劇団から一歩出ると普通のリアルな女性がわからず本物の男性の横にどう立てばよいのだろう、と一つ一つのことが新鮮に感じられました。外の世界に出て知ることは、たくさんありました。それらすべてが勉強であり、学びがあり、そこから経験したものは少なからず現在に生かされていると思います。

そういう経験をした上で、再び宝塚OGの方々とご一緒することは、いろんなことを知った上での自分なりの「味」が少しでも出るのではないかな、と思っています。今回の舞台は、同じ釜の飯ではないですけれど(笑)、衣食住を共にした同じ場所から卒業した8人が揃い、それぞれに経験して影響されたものが表現されるのは凄いことなのでは、と思います。

 

いつも寄り添ってくれる存在

私生活では、愛犬が不思議といつも寄り添ってくれるそうですね。

私が宝塚歌劇団でトップ娘役になったときに、「しゃべ」(愛犬チワワの名前)が我が家に来ました。一番大変なときで、自分にないものをどうにか補わなければならない、マイナスポイントをどう克服しようとそういうことばかりにとらわれて、心が負けてしまうようなこともありました。自分と闘い続ける日々は辛く、そんなとき、ずっと見守ってくれたのが「しゃべ」でした。真っ直ぐに素直な気持ちで愛情をぶつけてくれる彼女がいるから頑張れると思いましたし、支えになってくれました。

動物は、本当に不思議ですよね。私は、動物を見ると、すぐ泣いてしまいます(笑)。感動的な話でも切なくなってしまい、情が入りすぎて、そういう作品や番組は見ることができない程です。

 

自分を取り戻す瞬間

人生で、喜びやきらめきを感じるときはありますか?

小さい頃から、自然のなかで育ちました。(出身の富山は)海も山もあって、緑もある田舎です。そこから10代半ばで劇団に入り、早く垢抜けなければ、洗練されなければ、感覚も研ぎ澄まされなければ、というように都会で生きることに必死でした。だからこそ、実家に帰るだけでも、自分を取り戻すような感覚を持っていました。

自分自身を見つめ直す、というのは難しいことだと思います。自分の本当の気持ちは、と考えたり、悩んだりすることはよくあります。そんなときに心を取り戻す方法は、私の場合は故郷(ふるさと)に帰ることです。実家の近くの広い海や、あるがままの自然を眺めていると、幼いときに自分の遊んでいた姿が思い浮かびます。小さい頃は何も考えることもなく、ありのままの自分だった、と思い出させてくれるのです。

このお仕事は、やはり感情を扱う仕事なので、自分自身の感覚を取り戻す時間は必要だと思います。それがいまの私にとっては、故郷での時間なのだと思います。もちろん、学んで勉強してきた大人の考え方も必要ですが、実家に帰って自然を見たいと思うときは本当の自分を取り戻したいときなのかもしれません。実際はなかなか帰ることができないのですが、自分と向き合えたときは、景色もいっそう綺麗に見えるような気がします。

 

演じることは自由。自分の「色」

舞台上で、自由を感じる瞬間はありますか?

共演者の花乃ちゃん(カトリーヌ役の花乃まりあさん)に、「ねねさんって、いい意味で自由ですね」と言われました(笑)。私、自分でも本当にそう思います。縛られることが嫌いで、「自由」という言葉が大好きです。

演じることは、自由です。例えば、一つの役をトリプルキャストで演じるとしたら、絶対に同じ役にはなりません。それは、自分のなかで自分を信じてあげないと、自身の「色」が出ないように思います。だから、ありのままの自分を持っていることは役を演じる上でも重要なのではないでしょうか。 


歌劇団を卒業後さまざまなステージ経験をされた夢咲さんが、ホームである宝塚の豪華なOGの方々と共演する、美しくもスリリングな舞台が8月に幕を開ける。

<Information>
『8人の女たち』

原作:《HUIT FEMMES》by Robert THOMAS
上演台本・演出:板垣恭一

出演:湖月わたる、水 夏希、珠城りょう、夢咲ねね、蘭乃はな、花乃まりあ/真琴つばさ、久世星佳

日程・会場:
【東京】2022年8月27日(土)〜9月4日(日) サンシャイン劇場
【大阪】2022年9月9日(金)〜12日(月) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

料金:【東京】S 席 11,500 円 A 席 9,000 円 【大阪】全席指定 11,500円
一般発売:2022年6月25 日(土)

お問合せ:梅田芸術劇場 【東京】0570-077-039 【大阪】 06-6377-3888 (10:00~18:00)

企画・制作・主催 梅田芸術劇場
著作権代理 (株)フランス著作権事務所

公式サイトhttps://www.umegei.com/8femmes/
公式 Twitter @8femmes_umegei

『8人の女たち』作品情報はこちら

 

撮影:吉原朱美

text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。

 
 
 

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